一細胞レベルでヒストン修飾解析が可能!?(ChIP-seqに代わる新技術ChIL-seqについて)
一細胞レベルでヒストン修飾解析が可能!?(ChIP-seqに代わる新技術ChIL-seqについて)
本日は論文の紹介です。
先日、Nature cell biologyから出た論文で、九州大学の大川先生のグループが発明したChIPseqに代わる新技術についての報告です。
まとめ
・immunostainning(免疫染色)とtransposaseを用いて、興味のある因子(ヒストン修飾や転写因子)付近のゲノム領域をターゲットし、それを次世代シークエンサーを用いて解析した。
・小細胞(100-1000 cell)ではChIP-seqと比較して精度が良い。
・転写因子(MyoD)の解析も1000細胞でできている。
・ヒストン修飾の解析はシングルセルでも可能。
・transposaseがオープンクロマチンをターゲットしやすく、ヘテロクロマチンをターゲットしにくい(バイアスがかかる)。
・全工程で3-4日かかる。
論文タイトル
A chromatin integration labelling method enables epigenomic profiling with lower input
イントロ
九州大学の大川先生のグループが発明したChIPseqに代わる新技術(ChIL-seq)についての報告です。
タンパク-DNAの結合を解析するスタンダードな方法としてはChIPseqが知られているがこの方法には典型的に1millionの細胞が必要で最低1000細胞が必要となります。
より少ない細胞でタンパク-DNAの結合を解析するために様々な方法が開発されてきており、
ultra-low-input micrococcal nuclease-based native ChIP (ULI-NChIP)
や
ChIP-mentation、Mint-ChIP、STAR-ChIP and TCL-ChIP、Drop-ChIP、MOW-ChIP
などがあります。
ChIP-seqではクロマチン精製やIPの過程でロスがあるため、細胞数が多く必要でしたが、
ChIL-seqではその問題点を克服しており、少数の細胞でヒストン修飾や転写因子の分布を解析することができる。
ChIL-seqの方法
生細胞を固定、透過処理、1次抗体で免疫染色を行うまでは通常と同じ。
2次抗体にT7 promoterやTn5 (transposase)が結合するための配列を含む二本鎖DNA (ChIL DNA)が繋がっている。
ChIL DNAは1次抗体が結合した近傍のゲノム領域にintegrateされ、T7 RNA polymeraseによって増幅される。
これを用いてシークエンスのライブラリーを作成し、シークエンスを行う。
結果・感想
C2C12でヒストン修飾(H3K4me3, H3K27me3, H3K27ac)のChIL-seqを行った結果、
70-80%のリードがマップされ、ユニークリードが5-15% (100cell), 55-70% (100K cell)
ヒストン修飾の分布に関して、ChIL-seqの結果はChIP-seqの結果と大体同じ結果が得られた。
細胞数の条件検討をしたChl-seqの結果をIGVのデータを見ると、
100, 1k, 10k, 100k cellでヒストン修飾の分布は大体同じ。
ノンスぺはあるがcontrolを取って補正すれば多分問題ない。
シングルセルでChIL-seqを行った結果では
見ているヒストン修飾によっては1 cellと100 cellで大きな差は無さそうなものもあるが、
修飾によっては差がありそうだったり、細胞間のバラツキもありあそう。
論文リンク
詳しくは以下のリンクからどうぞ
https://www.nature.com/articles/s41556-018-0248-3