博士の就職先(弁理士)
以前博士の就職先についてのブログを書いた際に、
「博士(研究)の就職先として弁理士があります!」
というコメントをいただいた。
そもそもどのような仕事なのか知らなかったため、どのような仕事なのか、どのあたりが向いているのか考察しました。
弁理士とは
弁理士は〝知的財産に関する専門家〟です。
弁理士法
(弁理士の使命)
第1条 弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。
(日本弁理士会)
一言でまとめると、特許や知的財産に関する専門家です。
・新しい発明に対し、発明者の権利である「特許」や「実用新案権」
・新しいデザインを生み出した人の権利である「意匠権」
・自分の商品やサービスを他人のものと区別するための「商標権」
などの取得のサポートを行うようです。
確かに、博士の人で特許などに関する仕事に進んだ人がいた事を思い出しました。
研究関連などの特許の仕事では、「研究のバックグラウンドがある人の方がいい」と言っていたことを思い出しました。
弁理士の仕事
特許関連の仕事を例にすると、
出願者の方から依頼内容をくみ取り、相談・打ち合わせを行います。
次に、出願書類の作成
その後、特許庁と出願後の対応があり、
特許が認められるようです。
実際の募集要項から仕事内容を抜粋すると以下のようでした 。
特許出願、拒絶理由通知への応答、 特許調査、情報提供、鑑定、ライセンス契約、無効審判、訴訟などの代理またはその補助
・エンジニアリング系(工学・情報・理学など)の発明相談・発掘等研究者の知財創出の支援、特許権出願・権利取得から技術移転に至る一連の知財・技術移転に関する業務及び受託研究・共同研究や競争的資金の獲得における知財の側面からの支援、などを行う。
ソフトウェア、ビジネスモデル、構造系の発明に関する業務全般を担当していただきます。発明者との面談、明細書作成、中間処理、特許調査、鑑定、特許翻訳、係争、知財コンサル等、多岐にわたり活躍していただけければと思っています。
専門的な分野の発明に関する業務をすることが分かりますね。
弁理士に求められる能力
・技術的な知識
発明・発見を技術的に十分理解したうえで、最適な権利を取得するために必要。
新規技術の発明などであれば、その内容を理解できなければ、何が特許として認められるのか判断できません。
そう考えると、既存の技術を学べること・最先端の研究技術を理解できることは弁理士にとって重要な能力だと言えます。
・法律的な知識
特許に該当するか、これまでの特許との関係など、その他様々な手続きを行うために必要 。
他の人の特許に抵触するかどうか、どうしたら特許として申請できるかなど、法的な知識が必須です。
技術面と法律面を把握しているプロフェッショナルですね。
博士学生の持つ能力
博士課程の就職先でも書きましたが、博士課程の学生の持つ強みとして
研究遂行能力
論理的思考能力
があると思っています。
学会など人前で研究について説明することが多いと思うので
プレゼンテーション能力なども高いと思います。
研究遂行能力に関しては
研究を行う際は、
既存の研究分野の知識について把握し、
課題を見つけて、自分で実際に研究して明らかにする。
論理的思考能力に関しては
既存研究の現状を理解し、自分の研究での新規性を考え、達成する手順を論理的に考える。
以上から博士学生の持つ能力は弁理士に必要とされる能力と親和性が高い事が分かります。
では、弁理士になるにはどうしたらいいのでしょうか?
弁理士になるためには
弁理士になるには、弁理士試験に合格し、実務修習を終了する必要があります。弁理士試験は年に1回おこなわれ、短答試験、論文試験、口述試験の3つの試験に合格する必要があります。
え...?
弁理士試験は5月に1次試験の短答式、7月に2次試験の論文式、10月に3次試験の口述式が行われ、論文式試験は短答式試験に合格した者、口述試験は論文式試験に合格した者に行われます。
え、え...?
ちなみに平成29年度の弁理士試験では、志願者数4,352名、受験者数3,912名。合格者数は255名となっています。合格者の男女比は、男性72.9%、女性27.1%。平均受験回数は4.2回となっています。
は...?
まとめると、弁理士になるためには、約半年かけて弁理士試験に合格し、さらに実務研修を受けなければならない。そして試験の合格率は約7%である。
弁理士は博士の就職先なのか?
なぜこのような困難な条件で弁理士が博士の就職先としてあるのか疑問だったので、博士で弁理士になった人の事例を調べてみました。
その結果、2つのパターンがあることが分かりました。
・最終的に弁理士を目指して、研究について学ぶために博士に進学する
・研究を志して博士に進学し、就職する際に弁理士を選択する
このブログを見ている方の大半は下の場合だと思うので、説明すると
まず、在学中に弁理士になるのは困難です。
一年かかりますし、他の研究や就職活動と並行して行うのは非常に厳しいと思います。
ではどうするかというと、
まず弁理士が所属する特許事務所などに、特許技術者などで入社する。
その後、弁理士試験に合格して弁理士へキャリアアップする手順になると思います。
とはいえ、企業側は博士を必要としているのでしょうか?
企業から見た需要はあるのか?
とりあえず、博士に対する求人があるか調べる時のJREC-INです。
いつもお世話になっております。
キーワードが「特許」だけだと、かなり検索に引っかかったので「弁理士 特許」で検索すると6件ヒットしました(2019年1月17日現在)
基本的に弁理士資格がなくても、特許事務所に入るのは問題ないようです。
まずは特許技術者という職種?で応募し、弁理士資格を取得すると弁理士になれるようです。
博士取得者以上!というのは2社あり、その他も修士以上など博士の需要はあるようです。
ただし、現状の募集では理学・工学系の知識が必要そうでした。
生物関連の特許も勿論あるので、生物分野を扱う特許事務所なら生物系の知識も生かせます。
在学中に特許に絡んだことがあるような人だと優遇されるようです。
個人的な感想
特許を出願しようとしている企業の打ち合わせを聞いたことがあるのですが、
既存の技術の理解、新しい技術の把握、さらにそれぞれの特許範囲を把握したうえで、特許が関わる人とのすり合わせを行うなど非常に専門的な職業だと感じました。
研究者がこれらを全て行うのはほぼ無理です。
そのため、間違いなく必要な仕事だと思います。
仕事の内容を理解した上で、その仕事がやりたくて、仕事を選んだ理由を明確に説明できるのであれば、博士学生は弁理士に必要な素養は持っていると思うので、企業からの需要もあるため良いかなと思いました。
まとめ
・博士人材の需要はある(研究分野の知識・論理的思考能力)
・特許事務所に就職してから、後に弁理士資格を取れば弁理士になれる
・仕事の理解、選んだ理由は明確にする必要がある(弁理士に限らないけど)